インプラントができない人とは?対処法とその他の治療を解説

「顎の骨が少ないからインプラントはできないと言われた」「糖尿病や骨粗しょう症があると、インプラントは受けられない?」このような疑問をお持ちではないでしょうか。

インプラントは顎の骨に人工歯根を埋め込む外科治療です。そのため、お口や全身の状態によっては、すぐに治療を始められないことがあります。

ただし、インプラントが難しい条件に当てはまっていても、必ずしも「一生できない」という意味ではありません。歯周病や持病の状態を整えたり、骨を増やす処置を行ったりすることで、治療できるようになるケースがあります。

一方、全身状態や服用中のお薬、顎の骨の状態によっては、インプラント以外の治療を選んだ方がよい場合もあります。

この記事では、インプラントができない、または慎重な判断が必要になる人の特徴と対処法、インプラント以外の治療方法について解説します。

インプラントが「できない人」と「すぐにはできない人」は異なる

インプラントの適応は、単純に「できる」「できない」の二つだけで判断されるものではありません。大きく分けると、次の3段階があります。

状態 治療の考え方
現在の状態では難しい 歯周病、虫歯、喫煙、持病などを改善してから再検討する
追加処置が必要 骨造成や噛み合わせの調整などを行ってから治療する
インプラントを勧めにくい 外科手術へのリスクが高く、ブリッジや入れ歯などを検討する

日本口腔インプラント学会も、持病や服薬、骨不足、歯周病、喫煙などについて「注意が必要」「治療が困難になる」と説明しており、すべてを一律の禁忌とはしていません。
出典:公益社団法人日本口腔インプラント学会

治療の可否は、歯科用CTによる骨の確認、口腔内の診査、持病や服薬状況などを総合して判断します。

インプラントができない、または難しくなる人の特徴

顎の骨の量や厚みが不足している人

インプラントは、顎の骨にインプラント体を埋め込み、骨と結合させる治療です。そのため、インプラントを支えられるだけの骨の高さや厚みがない場合、そのままの状態では治療が難しくなります。

顎の骨が不足する主な原因には、次のようなものがあります。

  • 歯を失ってから長期間経過している
  • 重度の歯周病によって骨が吸収されている
  • 抜歯後に骨が痩せている
  • 上顎洞が大きく、上顎奥歯の骨が薄い
  • もともとの骨格として骨の幅が狭い

特に前歯部分は骨が薄く、骨の吸収によってインプラントの位置や歯ぐきの形に影響が出ることがあります。

対処法:骨造成を検討する

骨が不足している場合は、骨を増やす処置によってインプラントを埋入できる可能性があります。

代表的な方法には、以下があります。

  • GBR法
  • ソケットリフト
  • サイナスリフト
  • 抜歯窩保存術
  • 骨移植

骨造成の必要性や方法は、骨が不足している位置と範囲によって異なります。

ただし、骨造成を行えば必ずインプラントができるわけではありません。治療期間や身体的負担、費用も増えるため、メリットと注意点を確認したうえで判断します。

重度の歯周病がある人

歯周病が進行している状態でインプラント手術を行うと、細菌感染やインプラント周囲炎のリスクが高くなります。インプラント周囲炎とは、インプラントの周囲に炎症が起こり、歯ぐきや顎の骨が破壊されていく病気です。
天然歯を歯周病で失った方は、インプラントを入れた後も同様の環境が続く可能性があります。日本歯周病学会の指針でも、歯周病の既往がある人は合併症が多く、インプラント治療の成功に影響する可能性が示されています。

対処法:歯周病治療を先に行う

歯周病がある場合は、インプラント手術より先に歯周治療を行います。歯石やプラークの除去、歯磨き方法の改善、必要に応じた歯周外科治療などによって、炎症をコントロールします。
歯周病が落ち着いた後も、インプラントを長く使うためには定期的なメンテナンスが必要です。

虫歯や口腔内の感染がある人

治療していない虫歯、歯の根の病気、膿がたまっている部分などがあると、インプラント手術後の感染につながる可能性があります。インプラントを入れる場所から離れていても、口腔内に細菌感染が残っている場合は注意が必要です。

対処法:感染源を治療する

虫歯や根の病気がある場合は、先に必要な治療を行います。保存が難しい歯については、抜歯後の治癒を待ってからインプラントを埋入することがあります。条件が整っていれば、抜歯と同日にインプラントを埋入できる場合もあります。

糖尿病の状態が安定していない人

糖尿病があると、傷の治りが遅くなったり、感染に対する抵抗力が低下したりすることがあります。ただし、糖尿病があるという理由だけで、直ちにインプラントができないわけではありません。重要なのは血糖値が適切に管理されているかどうかです。

対処法:内科と連携して血糖状態を確認する

血糖コントロールが不十分な場合は、まず内科での治療を優先します。

インプラント治療を検討する際は、以下の情報を歯科医師へ伝えてください。

  • 糖尿病の治療状況
  • 最近の検査結果
  • 服用している薬
  • インスリン治療の有無
  • 低血糖を起こした経験

歯科医師と内科の主治医が情報を共有し、手術の可否や時期を判断します。

心疾患や高血圧などの持病が安定していない人

心疾患、高血圧、呼吸器疾患、腎疾患、肝疾患などがある場合、外科手術や麻酔による身体への負担を考慮する必要があります。病状が安定していれば治療できるケースもありますが、状態が不安定なときはインプラント手術を延期することがあります。

対処法:主治医への確認と医科歯科連携を行う

持病がある方は、お薬手帳や検査結果を持参し、病名や治療状況を正確に伝えることが重要です。特に血液を固まりにくくする薬を服用している場合、自己判断で休薬してはいけません。手術方法や止血への対応を含め、歯科医師と主治医が相談して判断します。

骨粗しょう症の治療を受けている人

骨粗しょう症があっても、必ずインプラントができないわけではありません。ただし、骨の量や質に加え、骨粗しょう症やがん治療で使用される一部の薬について確認が必要です。

対処法:薬の名称と投与方法を確認する

骨粗しょう症の薬には、飲み薬、注射薬、点滴薬などがあります。

薬を使用している方は、次の情報を歯科医師へ伝えてください。

  • 薬の名称
  • 使用を始めた時期
  • 飲み薬・注射・点滴のどれか
  • 骨粗しょう症以外の病気
  • 過去の抜歯や顎骨のトラブル

薬を自己判断で中止すると、骨折などのリスクにつながります。休薬の必要性を含めて、処方した医師と歯科医師が検討します。

顎の骨の成長が終わっていない人

成長期にインプラントを埋入すると、顎の骨や周囲の歯は成長しても、インプラントは天然歯のように位置を変えません。その結果、成長後に歯の高さや位置が合わなくなる可能性があります。

対処法:成長終了まで他の方法で補う

年齢だけでなく、顎の骨の成長が終わっているかを確認して判断します。成長中の場合は、仮歯や取り外し式の装置などを使用し、成長終了後にインプラントを再検討します。

妊娠中の人

妊娠中はインプラントを絶対に受けられないわけではありませんが、通常は出産後に治療時期を変更します。インプラント治療では、レントゲン・CT撮影、局所麻酔、投薬、外科手術が必要です。緊急性の低い治療であるため、母体の体調や通院負担を考慮します。

対処法:出産後に治療計画を立てる

妊娠中は、応急処置や歯周病治療など必要な口腔管理を行い、出産後に改めて検査と治療計画を立てます。授乳中の場合も、使用する薬について歯科医師へ伝えてください。

喫煙を続けている人

喫煙は、歯ぐきの血流や傷の治りに影響し、インプラントと骨の結合を妨げる要因になります。
また、歯周病やインプラント周囲炎のリスクにも関係します。日本口腔インプラント学会は、インプラント治療前の禁煙を推奨しています。加熱式たばこについても、インプラント治療への影響がないとはいえません。
出典:日本口腔インプラント学会

対処法:治療前から禁煙に取り組む

手術の前後だけ一時的に控えるのではなく、インプラントを長く使用するためにも継続的な禁煙が望まれます。禁煙が難しい場合は、禁煙外来などの利用も選択肢です。

歯磨きや定期的なメンテナンスが難しい人

インプラント治療は、人工歯を装着したら終了ではありません。毎日の歯磨きや定期検診が不十分になると、インプラント周囲炎が進行する可能性があります。
身体的な理由で歯磨きができない場合、通院が困難な場合、将来的に介護が必要になる可能性が高い場合などは、長期的な管理まで考えて治療方法を選ぶ必要があります。

対処法:家族や介護者を含めて管理方法を検討する

本人だけで清掃することが難しい場合は、家族や介護者による口腔ケア、訪問歯科診療の利用などを検討します。将来的にインプラントの構造を変更したり、上部構造を取り外して管理しやすくしたりする可能性も含めて、治療前に確認することが大切です。

強い歯ぎしりや食いしばりがある人

歯ぎしりや食いしばりによって強い力が加わると、人工歯の破損、ネジの緩み、周囲の骨への負担などにつながる可能性があります。歯ぎしりがあるから必ずインプラントができないわけではありませんが、噛み合わせを考慮した治療計画が必要です。

対処法:噛み合わせの調整やマウスピースを検討する

インプラントの本数や位置、人工歯の形を調整し、力が一部分へ集中しないようにします。治療後に就寝時用のマウスピースを使用することもあります。

手術や局所麻酔を受けることが難しい人

インプラントは外科手術を伴うため、局所麻酔を使用します。過去の歯科治療でつらい経験がある方や、手術への恐怖心が強い方は、治療を受けることが難しいと感じることがあります。
ただし、恐怖心があること自体は、インプラントができない理由とは限りません。

対処法:鎮静法を含めて相談する

手術への緊張が強い方には、静脈内鎮静法を併用できる場合があります。既往歴や服薬状況を確認したうえで適応を判断するため、まずはどのような点が不安なのかを歯科医師へ伝えてください。

【関連記事】インプラントの局所麻酔と手術後の痛みについて

高齢だとインプラントはできない?

インプラント治療に一律の年齢上限はありません。年齢そのものよりも、次の条件が重要です。

  • 外科手術を受けられる全身状態か
  • 持病が安定しているか
  • 服用中の薬に問題がないか
  • 毎日の口腔ケアができるか
  • 定期的に通院できるか
  • 将来介護が必要になった場合に管理できるか

高齢でも、全身状態が安定していて口腔管理を続けられる方は、インプラントを検討できる場合があります。一方、寝たきりになる可能性や通院困難、認知機能の低下なども含め、将来的な管理方法まで考える必要があります。

「骨が少ないからできない」と言われたらどうする?

他院でインプラントができないと言われた場合は、まず理由を確認してください。同じ「できない」という説明でも、実際には次のような違いがあります。

  • 骨造成を行っていない歯科医院だった
  • 全身状態を整えてから再検討する必要があった
  • 神経や上顎洞との位置関係から難しいと判断された
  • 骨造成をしても十分な骨を確保できない状態だった
  • 治療のリスクがメリットを上回ると判断された

歯科医院によって対応できる治療範囲や設備は異なります。
ただし、複数の歯科医院へ相談すれば、必ずインプラントができるという意味ではありません。難しい理由と追加処置の負担を理解し、インプラント以外の方法も含めて比較することが重要です。

【関連記事】くらもち歯科医院のインプラント治療の特徴

インプラントができない場合のその他の治療方法

インプラントが適さない場合でも、失った歯を補う方法はあります。代表的な治療は、ブリッジと入れ歯です。

ブリッジ

ブリッジは、失った歯の両隣にある歯を支えとして、つながった人工歯を装着する方法です。固定式のため、取り外す必要はありません。
一方で、支えにする歯を削る必要があり、噛む力が両隣の歯に加わります。支えとなる歯の状態によっては選択できないことがあります。

部分入れ歯

部分入れ歯は、失った歯の周囲に金具などをかけて使用する取り外し式の装置です。外科手術を必要とせず、複数の歯を失った場合にも対応できます。
一方、装着時の違和感、金具の見た目、食べ物の挟まりやすさなどが気になることがあります。

総入れ歯

すべて、またはほとんどの歯を失った場合は、総入れ歯が選択肢になります。外科手術を受けることが難しい方にも対応できますが、顎の骨や粘膜の状態によって、安定性や噛みやすさが異なります。

インプラントを利用した入れ歯

顎の骨や全身状態によっては、少ない本数のインプラントで入れ歯を支える「インプラントオーバーデンチャー」を検討できる場合があります。
通常の固定式インプラントより埋入本数を抑えられる可能性がありますが、外科手術が必要なことに変わりはありません。

インプラント・ブリッジ・入れ歯の違い

比較項目 インプラント ブリッジ 入れ歯
外科手術 必要 原則不要 原則不要
周囲の歯を削る 原則不要 必要 状況により調整
取り外し 原則不要 不要 必要
治療期間 比較的長い 比較的短い 比較的短い
噛み心地 天然歯に近づけやすい 比較的噛みやすい 慣れが必要
主な注意点 手術・費用・メンテナンス 支えの歯への負担 違和感・安定性

どの治療にもメリットと注意点があります。

「インプラントができるか」だけでなく、残っている歯の状態、治療後の管理、費用、治療期間などを含めて選択します。

インプラントができるかを判断する検査

インプラントの適応を判断するため、一般的に次のような確認を行います。

歯科用CTによる骨の確認

歯科用CTでは、顎の骨の高さ・厚み、神経や血管、上顎洞の位置などを立体的に確認します。

通常のレントゲンだけでは分かりにくい骨の状態も確認できます。

歯周病と虫歯の検査

歯周ポケット、歯ぐきからの出血、歯の動揺、虫歯や根の病気などを調べます。

必要な治療を先に行い、口腔内の炎症を減らしてからインプラント治療へ進みます。

噛み合わせの確認

噛む力がどこにかかっているか、歯ぎしりや食いしばりがないかを確認します。

インプラントの位置だけでなく、最終的な人工歯の形から逆算して治療計画を立てます。

持病と服薬状況の確認

問診票だけでなく、お薬手帳や検査結果も確認します。

必要に応じて医科の主治医へ治療状況を問い合わせ、外科手術が可能かを検討します。

インプラントができない人に関するFAQ

顎の骨が少ないと、絶対にインプラントはできませんか?
骨が少なくても、骨造成によって治療できる場合があります。ただし、不足している骨の範囲や全身状態によっては、骨造成を行っても難しいことがあります。
糖尿病があってもインプラントはできますか?
血糖値が適切に管理され、主治医と連携できれば検討できる場合があります。状態が安定していない場合は、糖尿病の治療を優先します。
骨粗しょう症でもインプラントはできますか?
骨粗しょう症だけで一律に治療不可とはなりません。骨の状態と使用している薬の種類、投与方法、使用期間などを確認して判断します。
血液をサラサラにする薬を飲んでいますが大丈夫ですか?
薬の種類や手術内容によって対応が異なります。自己判断で中止せず、お薬手帳を歯科医師へ提示してください。
喫煙者はインプラントを断られますか?
歯科医院の方針や喫煙状況によって異なりますが、喫煙は治癒や長期的な維持に影響するため、禁煙を求められることがあります。
高齢でもインプラントはできますか?
年齢だけで判断するものではありません。持病、服薬、口腔ケア能力、通院状況などを総合的に確認します。
妊娠中でもインプラント治療を受けられますか?
通常は出産後へ延期します。妊娠中は必要な歯科治療や口腔管理を行い、出産後に改めて治療計画を立てます。
歯周病があるとインプラントはできませんか?
歯周病がある場合は、先に歯周病治療を行います。炎症や清掃状態が改善すれば、インプラントを検討できることがあります。
他院で断られた場合、相談してもよいですか?
相談は可能です。ただし、医院ごとに治療できるかどうかが違うというより、設備、対応できる処置、全身状態に対する判断などが異なる場合があります。断られた理由を確認し、追加処置の負担も含めて検討してください。
インプラントができない場合は入れ歯しかありませんか?
入れ歯だけでなく、ブリッジを選択できる場合があります。失った歯の本数、両隣の歯、顎の骨、噛み合わせなどによって適した方法は異なります。

インプラントができるか不安な方へ

インプラントが難しい条件に当てはまっていても、治療前の歯周病治療、持病の管理、禁煙、骨造成などによって治療できる場合があります。

一方、追加処置による負担が大きい場合や、治療後の管理が難しい場合は、インプラント以外の治療を選ぶことも重要です。

くらもち歯科医院では、歯科用CTなどの検査結果をもとに、顎の骨、歯周病、噛み合わせ、持病や服薬状況を確認します。そのうえで、インプラントだけを前提にせず、ブリッジや入れ歯も含めた治療方法をご説明します。

松戸・新松戸周辺で「骨が少ないと言われた」「持病や薬の影響が気になる」という方も、まずは現在の状態を確認するところからご相談ください。

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